もしも30分先の出来事がわかるなら?(晴過去)

                                                頼むから…もう入ってくるな…
                                       未来のことなんて知りたくねぇ…やめろ…

                                 誰の子か分からないが、新しい命が生まれる未来、
                                              とある男が病院で暴れ出す未来、
                                    親友が涙を流しながら衰弱死してしまう未来、
                                       どこかの魔法少女が自爆死してしまう未来、
                                其奴の仲間だろうか、劣等生なんて言っている未来、
                                          鬼が村を破壊し、人々を惨殺する未来、
                                          野良猫が暴走トラックに轢かれる未来、
                             ……妹が、野良猫のように、暴走トラックにはねられ、
                         紅い血、肉片が飛び散っているのを呆然とした目で見る未来。
                                   
                                        やめてくれ…やめてくれ…知りたくない…
                                       なんで俺にこんな能力を与えたんだ神様は…
                                              この俺にできることはないのか…?
                                   こんな、こんな能力、欲しくなんてなかった。
                                                     誰か…俺を殺してくれよ。
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「え…貴方の行く道はどっちか…ですか…上だといいですね。悪いことをして死んだなら…
…まぁ、俺はそういう仕事じゃないので。」
三途の川を渡る舟で、
先ほど亡くなってしまったのであろう方の質問に答える。
『俺はどっちに行くんだ…?』なんて少し怯えた顔で。
別に俺はコイツらに興味はないから適当に返す。
…だってコイツの心の闇、前が見えなくなるくらいあるから
どう考えたって下に落ちる。
この能力は昔から持ち合わせていたもの。
あらゆる闇を操る。俺はこれで死んだ奴らの道を
予測して暇つぶしすることが多かった。
このボートは漕がなくても進むから正直暇だ。
…多分だが、コイツも俺の妹が仕事で死に追いやられたのだろう。
まぁ、悪いことをしたのには変わりないのだろうが。
もし、悪いことをしていないのに亡くなっていたら自ら三途の川に
身を投げる奴もいる。…俺は其奴らを見張る仕事をしていた。
簡単でめんどくさいが高給料の仕事。
頭脳のない俺には丁度良かった。
ある日、俺の見張っている船に乗ってきた人が丁度777と、ゾロ目だったため、
ひとつだけその人の願いを叶えた。
「…ということで、何か願いことはありますか?なんでも叶えてあげましょう!」
営業スマイルで明るく言う。
相手は…、見た目が珍しい。白髪に光ひとつ入らない虚ろな瞳の幼い少女。マリーと名乗っている。
少しの間、きょとん、としていたが、ゆっくりと小さな口を開き、発した。
『…私の周りにいた人を見たい。』
…なんて。欲がない。俺は、目を見開き、聞いた。
「え…、そんなのでいいの?もう一度人生をやり直すこともできるし、俺らみたいに天使にも神使にもなれる。来世も決めたりできるけど…」
後悔はしてほしくなく、質問した。
『…いいです…周りの反応が知りたいの…』
少女の膝の上にあった小さな手で拳を作り、
ギュッと握っているのを見て俺は承知した。
“はぁ?マリーが自殺した?そんなこと知らないわよ!作りたくて作った子じゃないもの!"
「マリーさんのお母さんです。…とんでもない方ですね。」
『…』
"なぁなぁ!お前にしか頼めないんだよ!これ手伝ってくれよ!"
「…あなたしかいないと言って頼ってきていた貴方にとっての友人です。…誰にでも言っていたようですね。」
『…椎倉…』
「…本当にこれでよかったんですか?今から選びなおしてもいいですよ?」
なんて。こんなの見たら後悔するだろう、そう思い俺は言った。だが。
『…いえ、誰も迷惑してないようで安心しました。…私、死んでよかったです』
にへら、と微笑むマリーさん。…その表情はどこかしら懐かしかった。

「もう嫌だぁ…」
机に突っ伏し、頭抱え唸る兄。
テーブルの上の電球は稀にチカチカ、と消えかける。まるで命のように。
キッチンの窓から見える外は一億万の星が。毎日毎日変わらなくつまらない。
どれだけ人間の勉強をして頭をよくしても、
聖書を読んで勉強をしても、
俺の頭は良くなりやしない。
『あー…もう嫌だなっ!やめてやりたいよっ!』
バンっと拳を机に叩きつける妹。
マグカップや聖書、教科書がテーブル共に軽く跳ねる。
その衝撃で顔を打ってしまい、
主に衝撃を受けた鼻を抑える。
…本当にやめてやりたい。きっとこの思いも
表情に出ている。
俺の妹はフォルトゥーナであるが、それも実行の方らしい。
そのため、他人の決めた消えゆく命を殺めなければならない。
しかも小さな命でも大きな命でも容赦なく。
変われるのなら今すぐ俺と交換したいが、
頭脳がない俺に出来るとはは到底思えない。
…俺は、妹の表情を見て思った。息抜きで出かけるのはどうだろうか、
『…そんなんなら少し気分転換程度に出掛けてみる?』
『はぁ?』
おい、は?お前何言ってんのバカじゃねーの?って言っているような顔で
俺を睨むな。
何言ってんだこのバカは、と言うような目で見るな。傷つくだろうが。
それにしても、ここは天界だ。
楽しそうなものなんてほぼ無い。
あるとしたら…いやない。
「まぁまぁ、そんな怖い目付きで睨むなって、
せっかくの俺に似た可愛い顔がだいなn痛い痛いごめんって!!」
お前になんか似たく無い、と言いながら俺の手の甲を思いっきり抓る妹。
痛みに顔を歪める。情けないな。
「もう…この性格は誰にn…じゃなくて、
天界じゃなくて現実でいいじゃんここつまんないじゃん?」
ハサミを持つな。怖い。
…まぁ、妹の仕事場でもある。もしかしたら何か気になっていたものもあるだろう。
「どう?この案いいと思わない?いやー、我ながら天才かもしれないな…」
ドヤ顔をしながら聞いてみる。
天才ではないなんて知っているが。
…まぁ、この発想には私も賛成するのだが。
『いい…と思うけど…』
と、少し目をそらしながら言う妹。相変わらず素直じゃない。
『よっしゃっきたっ!んじゃ次の休み!行くぞっ!!!』
バンッと机に手を叩きで言う。
妹の時より勢いよくテーブルの上に乗っていたもの、テーブルが跳ねる。
妹はその衝撃で椅子ごと後ろに倒れる。
…仕事中、何かが俺の頭の中をよぎった。
この船から少年が飛び降りる映像。
…そんなの見たことがないから俺は何を考えてんだ、
その程度で考えるのをやめてしまった。
それから30分後ほど。先ほど脳内をよぎった少年が乗ってきた。
俺は『まさかね…』と思い、いつも通り接待した。…が、
いきなりにか少年が「帰らないと、」と言い、暴れだした。
…この光景。さっきとの同じだ。そう思いとっさに止めようとしたが、遅かったのか少年は飛び降りてしまった。
…予知能力…?…いやいや、そんなことある筈がない。まぐれだ。きっとそうだ。
…今度は妹が皿を割って指を切るシーンが頭をよぎった。…またか、そう思いながら俺は
家に足を向けた。
15分ほど経って家に着き、玄関の扉を開ける。
カシャン、なんて食器が落ちて割れるような音が聞こえ、俺は急いでキッチンへ行った。
『いったぁ…あ、お帰り』
さっきの様に指を切っている妹が。…新しく能力でもついたのだろうか、そうとしか考えられない。そう思いながら割れた食器を拾う。
…休日。約束通り今日は出かける。だがさっきからほとんど見えないが変なのが頭をよぎる。
誰かが暴走トラックに跳ねられるような。…まぁ、あまり見えない。俺には関係ないのだろう。そう思い、気にすることはなかった。

「…ねぇ吹雪、もしもお兄ちゃんの能力に30分先のことがわかる能力が
あったらどうする?」
…道中、なんとなくで聞いてみる。特に理由はないのだが、あるとすれば、さっきから頭をよぎるほとんど見えない何かの人物が妹に似ている気がした。
『は…?兄さんあらゆる闇を操る程度でしょ?』
はは、まさかのマジレスか〜、冗談だよ。なんて笑いながら言う。
本当の事を言うべきか、言わないべきか。よくわからなかった。
「別の道ないの…?俺あまりこっち行きたくないんだけどな…」
『見た限りたかったよ。こっち行くよ、』
あれから30分近く経つ頃、あの時、気づいていればよかったと後悔している。
あのトラックに跳ねられる人物は妹だった。
肉片や血液が飛び散り、関節がおかしな方向に曲がっていた。
…妹を死なせるわけにはいかない。
…俺が身代わりになってやる。
恐怖を飲み込んで浮かんだのがこれだった。
曲がり角を曲がる瞬間、
「ごめんね…っ」
妹の腕を引いて後ろに突き飛ばした、
ここからは話す価値もない。跳ねられ、5年間俺は眠っていた。
そして幼なじみ、聡四郎が妹を引き取っていると聞いた。
どうやら居場所は昼夜戦争という戦争が起こっている国の
月夜軍アジトらしく。
…俺はそこに向かった。向かう途中、聡四郎の連れている魂と偶然出会い、
案内してもらった。
入軍書(?)を提出し、無事軍に。
…妹の部屋の前。久しぶりに会うため緊張する。
キャップを深くかぶり、深呼吸。
…そして音を立てない様にドアを開ける。
…そこには修道服を身に纏った妹が。
妹は俺を見てハッとしては涙を浮かべた。
俺は帽子のバイザーを掴み、少し上にあげこう言った。
                                         『久しぶり。…可愛い可愛い妹さん。』

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長々とさせん…((
はるにーちゃんの過去はこれで終わりです!何と言ってもしません!(
途中に出てきたマリーちゃん。由来はマリーゴールド。
マリーゴールドの花言葉は
「嫉妬」「絶望」「悲しみ」
です。後者2つが彼女に合うものです。
もう一人、椎倉。由来はシクラメン。
シクラメンの花言葉は
『内気』『はにかみ』『清純』『きずな』『愛情』『思いやり』『緻密な判断』『嫉妬』『憧れ』
勿論絆などは嘘の絆、そう言う事です。
キリ悪いけど終わりまーす(

  • 最終更新:2018-11-21 16:27:13

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