【禁忌の双子】本編

<?? side>

静まりかえった薄暗い部屋の中。
格子状に見える空には、丸い月が青白く輝いていた。
そんな部屋には龍の角と尾を持った少年と翼を持った少女が力無く座り込んでいる。
その二人の髪にはそれぞれ小さな銀色のティアラが月明かりに照らされ煌めいていて。
この状況になったのは約二週間前、とあるこの王国の大臣の一言。

『この王国に混血の王位継承者は要らない。
しかも悪いことが起こる前兆とされる双子等言語道断。』

そんな声に、誰も反対しない。いや、できなかった。
人間と血を分かち合うのは重罪だから。
その話から双子の兄妹を処刑することに決まり、
この二人の王子と姫は明後日死刑になる。

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<ルーリアside>

死刑前日。私たちは特別にそれぞれの部屋に帰された。
理由は牢屋から処刑場が遠いからだそうだ。
………私は、何のために頑張って来たのだろう。
継承者の人数制限で公式の場には出れないけれど、親の前ではちゃんとした姫でいて。
毎日いざというときの為に魔法やダンス、礼法とかの稽古をして。
城の人達の冷たい視線に気がつかないふりをしていつも笑顔を意識して。
あれもこれも全部、全部この世界で生きるためにって、頑張ってたのに。

「私の努力、、何だったんだろ。ふふっ」

今までがおかしく思えて苦笑してしまう。
こんな事も明日には忘れてしまえるんだ。
何もかも。親の事についての悩みも、独りが寂しかった事も、
自分の事を誰も見てくれないのが辛かった事も、
それでも隣で支えてくれた兄が大好きだったことも。
きっと、忘れられるんだろう。

「せめてこの世界に復讐、なんてしたいな。私をこんな目に合わせた此処に。」

ふと疑問に思う。何故私は存在したのだろう。
私がいなかったら兄だけでも生きることができたかもしれないのに。
一瞬の想いが頭の隅に残ってしまって。
私は考えているうちに牢屋で寝ていなかったからなのか猛烈な眠気に襲われ。

───刑は明日。明日、私は消えるんだ。

<同時刻・アレンside>

バタン、と扉を乱暴に閉めて久々の布団に倒れ混む。
何でこんなことに巻き込まれるはめになるんだ。
俺達は何も悪くないのに。混血だから?それは親に言えよ。
双子?そんなのどうでも良いだろ。ただの迷信を信じてんじゃねえ。

「あー。真面目に人生無駄だったな。」

今まで自分は何をした?剣術を教わり、腕を磨いて。
戦争の指揮を取れるように軍の構成や動かし方を学んで。
たまに父の国王の手伝いをして、会議にも時々参加して。
隣の国へ使者として派遣されたり。舞踏会で馴れない人と接したり。
一体なんのためだよ。なにもかも無駄。誰の役にも立たない。
そんな事を考えて、頭には“死”という一文字がリアルに感じる。
当たり前だ。明日には俺はこの世に、いないから。
こんな嫌われる容姿で城なんていう狭い世界に縛られなくてすむんだ。
そう思うとまあまあ良いかもしれない、と思う。

「せめて痛くないようにしてほしいな…」

ふ、と苦笑して、布団に潜り込む。

サヨナラ、この世界の月夜。もう永遠に見ることはないだろう。
そしてはじめまして、死後の世界。これから世話になるだろうな。

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~処刑場~<??side>

やっと。やっと自分の出番が来た。今日が表の自分が律していた
“自分”を解放できる。
さっき。夢を使って主導権を握り、兵に外へ連れ出された。
その道中はなるべく無表情。あまり楽しそうな表情じゃ怪しまれるから。

「ここまで頑張ってきたんだ。失敗はできないわね…」

兵「姫。着きました。そこの中央のステージでお待ちを。」

そう言ってきた兵士の指差したのは首吊り台。
そこには既に待っていた兄の姿が。
ちなみに今は、表の人格の姿にしているので誰にも中身が別人なのには気がつかない。

『ルー………。』

「お兄ちゃん、大丈夫。きっと何とかなるよ。」

そこでようやくいつもの笑顔。心配させないように。
大丈夫。私がこの世界を滅亡させるから。
貴方を、救うから…………。

処刑の合図が、鳴る……………。
そして私は、ううん、ルナは元の姿に戻り、狂気じみた笑顔で叫ぶ。

「さあ………せいぜい楽しませてよね?アッハハハハハハハ♪♪」

─────そして皆、消えちゃえば良いんだよ……。私、間違ってなかんか無い、よね…?

  • 最終更新:2018-11-13 16:22:49

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